世界のなまえ
梅昆布茶
遠い海を思う日
すべての手足が色あせて見えた
博物館に展示された金飾の棺のように
自我という幻が何かを閉じ込めているようだ
風化させるままに人生を問えば
その答えもまたかさこそと音をたてる
千日の昼を生きて夜に裏切られる
質問箱はもういっぱいで君の返答を待っている
回答者は列を成して質問という配給を望み
疑問という貨幣はとうに錆びついてわずかに
権力者のレリーフだけがしるしを残す
街路という街路にはひしめきあう流行が
すばやく目配せしあって夜に消えてゆく
遠近法の消失点にはただ疑問符だけが風に揺らいでいる
今日もまた素敵なゆで卵をくつくつと音をたてて
疑問符の温度で茹でては見るのだが君は好きだろうか
今月いっぱいって何か約束した気がするのだが
君の顔と約束が思い出せないんだ
それはみんな時が奪ってしまった痛みなのかもしれない
もう極東は秋だ
無言の海岸線が波にえぐられて空と会話する
それを僕達は翻訳できないうただと知るのかもしれない
皮膚に突き刺さったガラスの破片は遠くきらめいて見えるのかい
砂浜にはこころの化石の断片が無数に埋まっているのさ
僕達は本当にこの世界の子供なのだろうか
いまだに親の名前も知らずに
僕らはその回答をさがしているのだろうか