下らないもの
HAL

なにに於いても高尚なものだけが
ひとのこころを救い癒すものではない

能動さを求められず受動さだけで
なにも考えずいられる下らないものにも

背負う生の重さを軽くしてくれる力があることを
高尚と知性こそがひとが身につけるものだと想うものは

下らないものを高尚な言葉で知的な言葉で
本質を見抜けずただ鋭く批判して満足する

これは高尚 これは高尚ではない
これは知的 これは知的ではない

そう想いながら日々を重ねていくと
この世にある多くのものが下らないと錯誤し

そして自分が高尚なものや知的なものに
こころが蝕まれやがてなににも反応しなくなる

そして虚無や空虚や無力や暗黒や絶望に
そんなひとたちのこころは支配されていく

下らないものこそが逃げ場所であることに
高尚と知性に溺れるものは微々とも気がつかない

下らないものを軽蔑することも侮蔑することも
自分を軽蔑し侮蔑していることに等しいとは想わない

下らないものを知ってこそ
秀でたものが分かることを

高尚なものも知的なものも
その土台は下らないものに

支えつづけられ生存していることを
知ることもないままにこの世を去る

下らないものにもその役割はあるのだ
例えばこの詩も下らないものであるように


自由詩 下らないもの Copyright HAL 2012-09-25 20:56:20
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