下らないもの
HAL
なにに於いても高尚なものだけが
ひとのこころを救い癒すものではない
能動さを求められず受動さだけで
なにも考えずいられる下らないものにも
背負う生の重さを軽くしてくれる力があることを
高尚と知性こそがひとが身につけるものだと想うものは
下らないものを高尚な言葉で知的な言葉で
本質を見抜けずただ鋭く批判して満足する
これは高尚 これは高尚ではない
これは知的 これは知的ではない
そう想いながら日々を重ねていくと
この世にある多くのものが下らないと錯誤し
そして自分が高尚なものや知的なものに
こころが蝕まれやがてなににも反応しなくなる
そして虚無や空虚や無力や暗黒や絶望に
そんなひとたちのこころは支配されていく
下らないものこそが逃げ場所であることに
高尚と知性に溺れるものは微々とも気がつかない
下らないものを軽蔑することも侮蔑することも
自分を軽蔑し侮蔑していることに等しいとは想わない
下らないものを知ってこそ
秀でたものが分かることを
高尚なものも知的なものも
その土台は下らないものに
支えつづけられ生存していることを
知ることもないままにこの世を去る
下らないものにもその役割はあるのだ
例えばこの詩も下らないものであるように