街角で簡潔に詰め込んだ食事のあとで
ホロウ・シカエルボク





サンデーバザールのあと
あらしが何度か通りすぎ
片腕の乞食が食いっぱぐれ
捨て猫みたいに骨と皮だけになって


水気で頬をいっぱいに膨らませた雲は
策略的なハンターの目つきをしてる
背広姿の男達が地下鉄に運命を飲み込まれるから
入口にはいつも
いま空にあるのとよく似た雲がむざむざと揺れている


ウィラブユー
オールニーディズラブ
ロックンロールの本質が愛ではないことが
いまの彼らになら分かるだろう
野良犬の臭いがずっとする繁華街
誰も知らない詩人とジャンキーが
難しい本を見ながら話し込んでいる
詩人はなんでも自分の話しに変えたがり
ジャンキーはなにもかもシリンダーで吸い取る
どうだ、二人の目の落ち窪みようは
カテゴリなんか必要ないくらいよく似ているじゃないか


潰れたオープンカフェの廃墟で
コーヒーメーカーのフィルターを覗いたら
悪霊のような色になった
粉が世界を憎んでいた
ごみ箱にもいけない死体は
これからどんな闇を漂うのだろう
臭いも掻き消えてしまったあとには
誰がそいつの死後のうごめきに気付いてやれるのだろう?


風紀の乱れた公園で
酔っ払いの立ち小便に育まれたマーガレット狂い咲き
蜜を吸う蜂が顔をしかめた
「おい、こいつはどうしようもなく悪い土壌で育ってる」
公園にはもう蜂はこない
種はもうどこにも広がらない
人工アルコールマーガレット
いまだけの命を咲く
乳母車に乗せた赤ん坊をつれた若い母親が
ゆっくりとその花に近づき
綺麗と言って鼻を鳴らし
いい香り、と言って去っていく
きっとダンナも同じ臭いなんだろうさ
育まれる小便臭い愛
そこから生まれるのは黄ばんだ胎児だろう


冬が来るよ
冬が冬が冬が来るよ
いっしょに行こうよ
いっしょに行こう
きちんとした花が咲くどこかへ
ウィラブユー
オールニーディズラブ
ロックンロールの本質が愛ではないことが
そこではもっとちゃんと確かめられるはずさ




自由詩 街角で簡潔に詰め込んだ食事のあとで Copyright ホロウ・シカエルボク 2012-09-25 00:51:58
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