ハモニカ吹きの男
板谷みきょう

ハモニカ吹く奴って
なまらモテるんだぜ

場末の小さなライブハウスで
弾き語りブルースを歌った奴が
ハモニカに詰まった唾を
取りながら言ってたっけ

慈恵とか静修とか香蘭の娘とか
兎に角、ひっかけては
スガイの映画館でいちゃいちゃしたり
サンローゼで出勤前のホステスと
待ち合わせて同伴する代わりに
只酒を飲んだり
屋台団地の ピンク色の蛍光灯から
聞こえるオバチャンの
「お兄さ〜ん。遊んで行かな〜い。」の声を
冷かしで見て回って
C万でドラム缶のオバチャンを
抱いたことを誇らしげに話してた奴もいた

日の丸飛行隊を歌ってた奴は
どうしてるんだろう

精一杯背伸びして
大人ぶってたんだけど
みんなススキノから消えてった

ハモニカ吹く奴って
なまらモテるんだぜ

知ったかぶりして
曖昧に笑って
相槌打ってたけど

その意味は
今なら解るんだけど


自由詩 ハモニカ吹きの男 Copyright 板谷みきょう 2012-09-19 12:45:37
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