特殊な外交
A-29

日本は史上稀にみる国家である。その特殊性は憲法九条に謳われた戦争放棄、戦力不保持、交戦権否認の三条項に集約される。

この特殊性は国内外から「お花畑」などと揶揄されがちであり、その平和主義、楽観主義、理想主義は簡単に廃棄できるか、征圧できるものと見なされる。

しかし実際にはそれがいうほど容易でないことは戦後の歴史が示している。

なぜこれらの特殊条項はかくも執拗に存続しうるのか。アメリカが高圧的に押付けるから? 国民の平和希求が強固だから? 

そんなわけはない。激動の現代史上において70年近くも不変的に存続するのは、それが実効的であるからに他ならない。

そして、そのような特殊条項を憲法に謳う国家の外交姿勢が他のいかなる諸国家とも異質で、一般性を欠くのは、むしろ当然であろう。

したがって日本の外交は「弱い」という評価は的外れである。

自他ともに必要なのは、この特殊条項への練熟なのだ。

北方領土、竹島、尖閣、沖縄など、いずれも多種多様で複雑極まりない問題を抱えている。われわれはそうした諸問題に対し、この特殊条項がいっそう強靭で、かつ柔軟な実効性を発揮するものとなるべく、不断の修練を積まねばならない。

めんどくさいけど。


※むろん上記の「特殊条項」と自衛隊の存在は矛盾しない。自衛のための交戦はその違法性が国際社会によって阻却され得るから。


散文(批評随筆小説等) 特殊な外交 Copyright A-29 2012-09-19 09:42:29
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