平面も積もれば大和撫子で月に乳首をつけに行く旅
木屋 亞万

赤ん坊赤き心に赤き頬赤き光を湛えた瞳

この文字を画面越しに見つめている瞳はすべて人間のもの

ふるえる線香花火を握りしめるジュッと鳴いたらぼんやりと夜

AVを観ながらオナニーする奴はテレビおかずに白米喰ってろ

死ぬ前に一回セックスしたあとで「こんなもんかよ」つって死にたい

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とりあえずヒールを脱げばランウェイを時速30?で走れる

神様は写真うつりが悪いらしい後光のせいで逆光になる

歪みゆく骨格もとに戻せずにガタガタと鳴る扇風機など

パンドラの箱よりあけてはならぬのは眠りが終わるパンドラの夜

黒は黒ながら日に日に濃くなって色という色の気配は消えた

木を植えた男は現れやしない砂漠の心きしむ楼閣

蝉の声ロング缶のコカコーラ灼けつく舗道たまに打ち水

梅雨時に透ける背中と台風の度にめくれるスカート(イイネ!)

遠くから見たら綺麗な田園を電車で通り過ぎる朝です

見えました…かつてあなたに殺された配管工と恐竜の霊…

つかむ術を持たない腕を伸ばしては引っ込めているUFOキャッチャー

死んじゃった人はすいすい川を行く海を越えたら空と溶け合う

あつい 指 いらいら 眠気 かわき 汗 クーラー テレビ 扇風機 夜

どんどんと空であばれる夜の花とおくで眺めるからうつくしい

戦わないという戦い方もある(結局戦ってないけどね)

つらつらとかぼちゃに向こて話すんもおもろないから緊張しまっさ

いつまでも続きはしない栄光の翳りから逃げるようにはにかむ

僕がまだ生まれていないNineteen Eighty-Fourはなつかしい未来

黒電話ずっと鳴ってる頭んなか俺のかわりに誰か出てくれ

太ももと尻の付け根を咬むようなエロい蚊だからエロイカと呼ぶ

愛しても愛していてもむなしさがせなかの方からはらわたをさく

木の幹にズボン履かせて興奮し「逆さ立ちする女より良い」

僕はここで目を閉じたまま標本になるので朝食はいりません

君の息のかかったもの、リコーダー、マフラー、受話器、枕、こいびと

雷鳴が轟き雨の波立った街に溢れるLucky Skipped Beat!!

針金をえんえんとのみつづけてたやぶれかぶれだひんやりと夜

羽根のない扇風機、毛のないウサギ、くちびるのないぼくらのキッス

空気ごと止まったような夜だほら時間以外は動いていない

ふれているところににじむ汗ねつがきみにじとりとつたわっている

安心をしきって眠ると死ぬようにできていたら幸せに死ねる

真ん中を裂いてフィルムを引き剥がすおにぎりのかわききった海苔食む

口ほどにものを言う目の閉ざされて白い布きれ線香の赤

中身だけまんま自分を捨て去って他の誰かが宿れば良いさ

魂をまくらに吸われて地中へと浸透していく水に似ている

ありのまま働きアリのままママの言いなりになるあなたが好きよ

夢のあと街がシャワーを浴びている水飛沫の音だけの夜

終電は酒気帯びの客を乗せ終点まで各駅に止まります

「人類が滅亡する」はこれでもう何度目でしょう 死は望まれる

雷鳴が響く白闇白いシャツ濡れて透明はりつく背中

大量のバッタのように群れを成し飛び降りてくる大粒の雨

鉄板の雲から雨が熱々でジュ〜と叫ぶ蝉の断末魔


短歌 平面も積もれば大和撫子で月に乳首をつけに行く旅 Copyright 木屋 亞万 2012-09-15 16:36:03
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