空の繭
高原漣

薄れかけた痛みがまたリフレーンする

足を引き摺るように

黄金色にぼんやり照らされた坂を駆け上がっていく

瞳孔に白金のかけらをちりばめた少女が、

繭を、

採りにゆく。

かばんにいっぱいの絶望と、

灯火をひとつ詰めて

「あ、」

見上げる空に灰は満ちて……



墨染めの蝶が舞う、また墜ちる

展翅の館では熾火がちらつく

磔刑された昆虫、蟻たちが

生体を解体している、

分子が踊っている。



繭は輝く、

不完全な羽化をしてしまう

「待って、」

少女は手を伸ばす

端正な顔がゆがむ。

無指向性の慟哭。

その、孤独な右手に

つかむ

ものは

何だ


自由詩 空の繭 Copyright 高原漣 2012-09-13 17:57:47
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