一勝十八敗の飛行機乗り
高原漣

おお、彼は心臓売り

飯屋の上のらしんばんを見よ!

可燃性の心が散り散りになって、

またきりきり舞いして墜ちてゆく

風防の横にはまだひとつも雀の絵が描かれていない。


るるるるるるう……


そんな男が懲りずに駈けてゆく

丘を越えて

弧を描く

円環を空に視て

踊っている

雀と踊れ

見よ大空にアラベスクがあらわれる


「みててくれ。ミランダ」


旋転する天象たち

可燃性の心は火を噴いて、

投網の中で

雀はもがく

ゆっくりとしたフラット・スピン

おお、美しいばらよ。おお、栄光の十字架!

ダンスタブルが叫んだ。

緑なす平原に流星が……

彼の風防の下に

かくて雀は刻まれる。


自由詩 一勝十八敗の飛行機乗り Copyright 高原漣 2012-08-31 21:07:40
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