夏の結晶
マーブル
かなしいことを口にしたら雲が風任せにすばやく流れていた
ミネストローネのスープ色をして
逆上がりの途中でぐるんとかき混ぜてみた
急いで脱ぎ捨てた夏の終わりは
ドットが三つ歯切れの悪い調子で
インストロールもアンインストロールも出来ないまま
つぎはぎで縫った鮮明な憂鬱さの光度といったら斑模様で
そんな色違いの靴を履いて
小さい舌うちはよくもまあ響き渡るわけだ
無駄に滴るなあ
忘れ置いてきた白い傘が倒れていたこと
後ろ髪を引っ張られながら蝉の鳴声は青い陰へと落ちてゆくのかと
指先で唇をさすり考えている
時間がにわか雨のように降ってくるのを写し絵にしたとしても
すぐに溶き卵のように黄色一色にされてしまうのかもしれないのだ
季節はわりと気がはやい
ぼくは陽が落ちるのを丼持って今か今かと待ち構えているのさ
汚れなき皮肉になれるのならいいなあと虚ろなめをして
全身懐中電灯のようになって辺りをぐるぐる見渡してみるといいさと
毎晩運動会している星がにたにたとこちらを見下ろしている
なあ エンプティー そろそろ やめないか?
鮫だってそれくらいわかっているんだ
野蛮な脳みそで光の絨毯を意識して踏みしめてみると
眩しさのあまり 疲れも吹っ飛んだ
煤けたイ草のうえで 今じゃ大の字だ
疾走したサテライト
曖昧な縞馬だって駈けめぐる
あからさまにおどけてみせてもなんたって心がかなしいのならばドアノブは壊れたままだ
屈託のない微笑みをしているねと中学生の頃に先生に云われたことはいまだ忘れはしない
残暑に滲んだ汗とやらはきっと明日流す涙になるかもしれないし
ぼくは苦しまぎれに笑うことを覚えてしまったけれど
いつもそうだと聞かれたらそうでもないんだ
8月31日 祈りよりも超えるような気持ちが 真っ直ぐに染まりゆくのを 見逃しはしない
結局のところぼくはいつでも何処かの夏に咲いていたひまわりを思い出すのだろう
じゃれた夏の結晶を