月にハシゴなロマン
ヨルノテガム





 壁をつたうノコギリの八重歯に
 縦横斜めと深呼吸の刻みは触れ奮え
 傷つく運命のモーションは押し出される
 命は溢れこぼれ置き、傘の花咲く街の
 一時 生まれた子供たちの行列 泉の上へ。
 待ちびとの居ない都会の約束、高級車の徒競走、
 知らない間に無臭を犬に嗅ぎつけられている
 蠢く冒険者たちと、それに
 付き添わない幽霊たちの自制と眠りと。
 尾のない龍の怒り狂う首の覗き見趣味と。膨張の、



 腕の無い 雲にのった少年が花畑の上を浮かび
 私かもしれない
 私じゃないかもしれない主人公の少女は
 誰かの夢の中で感謝に似た祈りのビジョンを得る
 絵の具を混ぜてできた色で魚を描くと
「そんな魚いないよ」と言う他の子の声がし、しかし
 地球の裏側らへんで水がはねて魚影は失せた、泡一つ。



 サドルのない自転車回り回す、股関節の痛みを訴える
 巨大なヤモリトカゲの夜勤をいってらっしゃい見送る
 明かりを待つ虫々を口に入れ噛み ひとまわり身体の
 大きくなる頃に、雑誌グラビアを飾るヌードスターへと
 袋とじ込まれる、薄い平面の中の映し身へ化け残る



 恐竜は原子力爆弾を飲み込み、台風を尾で蹴散らし
 防波堤を乗り越える海水の壁に 高層ビルを折り曲げ
 ぶち当てた、そしてサーフィンもする、高圧電流に
 着替え、火山の湯に浸かる。隕石をお灸にして寝そべり
 エベレストの先っぽで隠れて自慰をした
 放屁一発でオゾン層の濃度を白亜紀やジュラ紀のそれに
 戻した そして自分サイズの車を乗り回した

 当てもなく真っすぐ 走るだけで
 ハンドルは無かった広野だった











自由詩 月にハシゴなロマン Copyright ヨルノテガム 2012-08-28 04:27:50
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