ノート(冬とけだもの)
木立 悟





左目はいつのまにか
左目になった
今も
怪訝な顔をしている


花を折っても
花のまま笑む
悲しくて
誰も見なくなった


海が窓を切り
壁にしたたる
冬の機械が
響いている


棘の生えた季節の幾つか
踊りの輪のなか入れずに
暮れから夜への
壁を見つめる


水へ土へ差し出されても
水にも土にもなれぬままに来た
原の原の奥
雪を燃す火




ちがうものになるはずだった
やわらかなやわらかなものたち
ほんとうにここに
きてよかったのか




何処にも在らず在るものが
爪と爪をすり抜けてゆく
遠く空へ吼えるもの
夜のこがねを咬み砕く






















自由詩 ノート(冬とけだもの) Copyright 木立 悟 2012-08-23 23:38:48
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