ビッグバン
結城 希

僕らは ひとりじゃいられないから
引かれ合って
手を取り合って 近づいて
抱きしめ合って 求めて
もっともっと
互いの境界線さえ越えて
ひとつになって
融け合って

ぐちゃぐちゃになっていく

そしたら
体の芯から
爪の先まで

火照って 熱くなって
なんだか頭がぼぅっとしてきて

もっともっと集まって
もっともっとぐちゃぐちゃになっていく
けど、もう何も考えられなくって

――でも、それでよかった
――君が傍にいたから

僕らは
わけもわからず
もっともっと集まって
もっともっとぐちゃぐちゃになっていった

そしたら

あるとき
急に
はじけた

大きな大きな 音を立てて
みんなてんでばらばらに
ちぎれて
あちこちに 飛んでいった

離ればなれになると
ぎんぎんに体が冷えて
あちこち自由が効かなくなるから

僕は必死に手を伸ばして
君も必死に手を伸ばしたけど

逆らえなくって
流されて

僕はこっちへ
君はあっちへ
飛んで行っちゃった

『……もしも…し』
『……聞こえ…ます…か』

ふたたび気づいたときには
君はもういなくて

僕は見知らぬ誰かと一緒に
ぐるぐると回っていた

ねえ、いま君は どこ?

僕は相変わらず
ひとりじゃいられないから
こうして手を伸ばしているし

彼も僕に向かって
手を伸ばしているけど

なんだかちっとも近づけなくて
互いの周りをぐるぐると
回ってしまっているよ

ワルツみたいにさ。

ここはなんだか
暗くて、
静かで、
冷たい。

僕はさびしくって
膝を抱えて
だから
ずっと
君に電波を飛ばしているよ

ねえ、いま君は どこ?
ねえ、いま君は どこ?

『……もしも…し』
『……聞こえ…ます…か』

「――はい」


自由詩 ビッグバン Copyright 結城 希 2012-08-23 01:07:09
notebook Home 戻る