八月は風の葉月
小池房枝
鱗めく細波 疾風がひゅんひゅんと川よりも速く駆け下るので
ひゅんと風がたちカーテンがふわりとし夕立が来ました 雨と屋根との
いかづちで空をこつこつ叩き割り孵化せんとしてるものは何かな
大丈夫、世界はちゃんと美しい ときにどんなに理不尽でもね
この雨は水脈のとぎれた水溜りに間に合わなかったそうです合掌
洗っても磨いても落ちない瑕ひとつ青天高く白い三日月
白いガーゼを千切らずそっと出来るだけほぐして広げたような絹雲
久しくて初めて見聞きするような雨の風景 遠近の音
越してきたアパートここは秋立ちて後に夕日が部屋を訪なう
半そでの腕に1ミリないような細やかな雨 夜のベランダ
木星が一番星だね三日月と水色の空で見つめ合ってる
二番星は真西に鈍く光ってるアークトゥールスそう、赤い星
王ハデス蛇遣い座にやって来てアスクレピオスと何話してる?
忘れてた流星群の輻射点 流れる星に在り処思いだす
夜明け間近半月火星を従えて東の地平の向こうを見ている
今ここに吹いている風なぜ夜の遠くの方から聞こえて来るのか
車なのに虫の音がずっとついて来る立秋過ぎの川沿いの道
オリオンといえばオリオンビールでしょう夏は朝まで冬は夜もすがら
土星の輪 地球に内緒で今のうちそっと外して裏返しちゃおう
ヒグラシは夜明けも告げる一日の始まりドーンピンクの朝焼け