片隅から
木の若芽
過去に戻るのではなく、過去を引き寄せ甦らせることで、今のつらいことを越える力
ができる気がします。この夏は古いノートを何冊も読み返すことになるでしょう。
「片隅から」
木の若芽
ひとりでワインを飲みにきたジャズバーの片隅
痛む頭を ふるえる指を
あたためるように冷たいワインが染みていく
やさしいこともいっぱいあるものね
冷えたグラスが目の前に置かれてから
その表面に水滴がつくまでの間に
わたしの心に浮かんだこと
すべてがあなたに似てくる
透き通った白ワインにあなたの顔の波が立ち 沈んでいく
その液体でのどをうるおす
足は走るため歩くためだけでなく
今は飛び上がるために使い
背中には鍛え上げられた翼をつけてあげましょう
もうたくましい翼が輝くように広がっている
わたしをそこに軽がる乗せて
近くにいても いつも遠くて
囲まれていても ひとりだった
わかるのは半分以下だった
心はもうひとつの方に吸い寄せられ
大きく大きくなっていった
縛られているように感じるのは間違い
あなたがそうしていないなら
つないでくれていると感じたらいい
あなたにそうしてほしいから
夜のジャズバー
人々の会話は自由に飛びかって
わたしの耳に入る言葉のはしばしに
わたしはわたしであることを
あなたのように感じる
ここに
出会って別れて 通り過ぎてぶつかって
たくさんの瞬間
くりかえす違ったドラマ 絶えないプレイ
その片隅