私達の間に
wako

     ?          

先に逝った人が心に棲む様に
   きっと愛が結びつけるのだろう
あなたは私の心に棲む
   複雑な感情が私達を

グルグル回るコンパスに
愛と憎が定まらない
重力さえも感じなくなり
広い空間に漂って
何かに引き寄せられていく
   遠くで声が
   耳に慣れた声が

   「見て!初めて咲いた花」

私達の間に咲いた花は
いつまでも一輪のまま
色鮮やかに
萎れずに
過去へ遠ざかっていく
もどれない過去へ

これがあなたの望んだ未来?

私が春の終わりに植えたあの花は
千の花が咲くというあの花は
もう数え切れない程咲いたけれど
長い長い夏はまだ終わらない
日々咲き続ける花の
一輪一輪に語りかけても
まだ言葉は尽きない
   語りかける言葉など
   もうないと思っていたけれど
冷たい風が吹いて
秋の虫が鳴き始めても
きっと咲き続ける事だろう
寒さに震えて
言葉が凍りつくまで

凍てついた千の花を
いつまでも心に抱えて

     ?

真夏の青空に揺れる大輪の花に
引き寄せられる鳥達
オレンジ色の花が揺れて
鳥達が群れ騒ぐ
   遠くで声が
   耳に慣れた声が

   「ねえ、あの鳥は?」

私達の間に飛ぶ鳥は
記憶の闇でもがく鳥
滅多に人目につかないけれど
確かにいる鳥

引きずり出して白日の下に?

記憶の闇でもがく鳥は
時に羽をふくらませて
私の視界を遮ってしまう
   現実を直視する事なく
   優しい光景に包まれて
     思わず安住しそうになる
記憶の闇でもがく鳥は
時に空気を震わせて
鋭い爪で皮膚を裂く
   血のにおいと生暖かさが
   瞬時にあの頃の記憶を呼び覚ます
     反射的に身をかわす

夏は日に日に遠ざかり
ノウゼンカズラの花は落ちて
落ちて
鳥の姿はもう見られない
花を求めて
鳥達は行ってしまったのか

私達の間に飛ぶ鳥は
檻にぶつかって
ぶつかって
どこへも飛べず
さえずりもせず
羽音もなく

滅多に人目につかないけれど
確かにいる鳥


自由詩 私達の間に Copyright wako 2012-08-01 11:04:58
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