アリスの塵
高原漣
SとN、極地のカクテルをあおる、しろがねの髪のアリス。
右手と左手に人間の磁場。
吸気/圧縮/燃焼/排気
一連の流れで魂はすり減るのだろうか?
確かめたいな。
真夏のすべらかな空気を吸い込むタービン、『ジャバウォック』、離昇出力2200馬力それはくろがねの心臓だ
ウサギは銀時計を観るそしてアリスはゴーグルをするマスクをかける
耐熱アスファルトのうえを転がる低圧タイヤ
車輪の下でお茶会を!
フラップが風をはらむと同時にトランプの兵隊は前へ、前へ
怪鳥は滑走距離1800メートルで楽しげに青空に躍り上がった。
高度4000メートルまで3分14秒。
摩天楼を愛撫しつつ北へ。
これより上は大気が薄い アリスの胸も薄い(なんですって!?)
宇宙の塵が降ってくる海底まで200メートル。ここはチョモランマより高い高度9800メートル
タンゴのリズムでスロットルを絞る/開く/絞る/開く 操縦桿を強く引く。
大迎え角をとる/失速/失速
ストールで滑りおちるのが可笑しくて、アリスは笑った。
離陸から28分後、成層圏到達。
暗い/黒い/けたけたわらう電子の妖精/太陽からの風/電離
未来はまだ、見えない