お前にわかるか
榊 慧

 よるべない虚無。
「もう生きていたくない」
と言語化しろといわれたので言語化してみるがやはり「もう生きていたくない」のであった。生きていることが苦痛なのだ。六歳から生きていることが苦痛だった。人は生来マゾヒストなんだなと中学生のとき思った。苦痛なことをみなやるからだ。しかも、継続的に
。ひょっとしたら俺だけ?そんなわけないよな、だってこんなにも「生きていたくない」んだもの。

 「よるべない虚無。」
 愛するとか死ぬとかどうでもいいっていう世界にいきたい。俺は生きていたくない。もう。金輪際。壁に足を打ちつける。痛い。痣ができる。痣だらけ。
 ぽつり。「死にたい」ねえほら、伝わらないでしょ?わかろうともしないでしょ?「死にたい」よ。なんてね。で、なんてね。すべての重さから遁れて生きれてならどんなに幸福かしれない、阿呆かもしれないが幸福かもしれない、けれどそれができないから俺はもう生きていたくない。うしろ向きは生まれつきです。うしろとまえとがわかりません。まっすぐ歩いたことがないから。まっすぐ歩けたことがないから。暗い夜のうちに/みずうみまでも覆ってしまう、「よるべない虚無」。その救済について、の、アンサーは見つかりません。死ねばいいのにっていうやつとかいるからね。

 眠れない:よるべない虚無によって。
 なんの眠剤飲んでもねむれません。なんの薬飲んでも病状が良くなりません。こんなときに電話をかける相手がいません。アンサー:「さっさと首を吊れ」。親に死にたいって言語化しろって医者に言われたから言語化してみたら、シカトされたし、よしうん死のうって親父のベルト結んでガレージで首吊ってああ視界が白い花火みたいだっ思ってたら親にベルト勝手に解かれた。何してくれるんだ。死ねって言い続けたあなた方の為にも死のうと思っていたのに、ちょうど俺も死にたかったし生きていたくなかったし、ほんとちょうどよかったのに。「カワサギがとぶぜ黒いハイウェイ。」
 よるべない虚無で今夜も痣をつくる、よるべない虚無のアンサーのないカワサギは殺さない。


散文(批評随筆小説等) お前にわかるか Copyright 榊 慧 2012-07-30 00:24:36
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