朝まで
瀬崎 虎彦
静謐な森で鼓動の残響に身を浸していると
自分はひとりではないのだな という気がして
振り返ると金色の目を光らせた
絶望が口をあけてたたずんでいた
それから半刻ほど あるいはもっと長い時間
僕たちは火を挟んで差し向かいになり
深淵を覗き込むうつろな鳥たちの声を聴き
それから過ぎた日々の燃え爆ぜる音を聴いた
沈黙の代償を鉱石で支払うことの
ひどい罪悪感にさいなまれて
出来ればこの体をもって報いたいと絶望が言う
僕はそれが罠だと知っているので(なぜ?)
気がつかなかった振りをして火をいじっていると
朝となっており絶望は姿を消していたのだった
自由詩
朝まで
Copyright
瀬崎 虎彦
2012-07-24 23:39:03