彼女
月乃 姫花

彼女は古いホテルに住んでいる

訪ねて来る人はいない

アールグレイの紅茶をこよなく愛し

その香りと味に心震わせている

そんな彼女のところに珍しく人が訪ねてきた

それはまるで子犬のような美少年だ。

彼は彼女をホテルのバルコニーでみかけた

彼は一瞬に彼女の虜になった

長い髪、澄んだ黒い瞳

そして彼女の放つ妖艶さに

「僕をあなたの一部にしてくれませんか?」
彼の言葉は震えながらも彼女に届いていた

彼女は微笑み彼に自慢の紅茶を入れてあげた

もう夕焼けがキラキラしている窓辺に
二人は見つめ合った

そして時が止まった



自由詩 彼女 Copyright 月乃 姫花 2012-07-22 01:31:48
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