樹々へのコラージュ
草野春心
(煙突)
獣たちの
輝いていた瞳は
もう、眼窩にひそみ
昼の祝祭は
夜の灰となり
細い導管を
遡る
(車)
わたしは
何も考えることなくここに居ればよかった。
何ひとつ携えることなくここに辿りつけばそれ
でよかった。壁は遠く、仄かに白い。声を発す
るのはただ光だけで、名もなき昆虫たちは茂み
のなかで、我々の細部を食む。
わたしは、
何も考えることなくここに居ればよかった。
点を線へと変え、或いは線を点へ還し、穏やか
なモンスーンが柔毛を撫でて去るのを見送って
いれば、それでよかった。
わたしは
ひとひらの迷いを
抱え、
閉ざしたまま
散ってゆく、
一台の
車。
(偶然)
街に
背中があり
偶然の歌たちはそこで
這い這いをして遊んでいる
街に腕があり
偶然の夢を抱えて
ドッジボールに興じている
スコアさえ忘れて
街に
心があり
偶然の愛に
少しだけ、怯えている
(旅の宿)
風が
そよぐのをやめたとき
僕の一枚の姿は
きみの瞳にするりとおさまる
日々のつかれ
嘆きにはせめて
湯のみ一杯の夢を
花が
わらうのをやめたとき
そばに居てくれ
居させてくれ
きみの瞳だけが
僕の旅の宿
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コラージュ×4!