白い息を吐く。
永乃ゆち

もうじき冬が来る。

あの人に出会った冬が来る。

あの頃私は浮かれてて

名前も知らない出会いだけを信じていた。



春に出かけたダムには

まだ氷が張っていたし

山には雪が残っていた。


夏の夜ごとに苦手な坂道を克服して

星を見に行った。

反射板が滑走路に見えて

何処までも続いてると思った。



その先は何処だったろう?



紅葉の約束も出来ないままで

また冬が来る。



振り向けなかった沈黙や

責められなかった笑顔が

あの人の我が儘と私の弱さを教えてくれた。



そしてもうじき冬が来る。

忘れられた笑い声が

たまに白い息を吐く。


自由詩 白い息を吐く。 Copyright 永乃ゆち 2012-07-16 22:53:33
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