夏だ!
草野大悟

「どうしようもない」が「どうしようもない」に
くどくどいちゃもんをつける梅雨
も一人の「どうしようもない」は
冷蔵庫とクーラーを両手に従えて
濁流の中へとんでゆく。

「どうしようもないね」
「どうしようもない」が言う
「そう、どうしようもないね」
もう一人の「どうしようもない」も言う。
「どうしようもない」は
「どうしようもない」以上に
どうしようもなくって
冷蔵庫の後に
隠れたりしてみせるけれど
そんな仕掛けは
だれだって見切っていて
「ばれちまいましたか」などと
ごたくを並べるヒマさえ「どうしようもない」に
与えない。

夏だ!
梅雨も明けたよ!

濁流は
そううそぶきながら
濁流である自分を誇り
そんなことねぇよ
などと
ニヒルな虚無を気取って
青空の下で
タイヤにのって羅干ししているミドリガメを
俯瞰している。

おそらく
たぶん
どこにも
そして、だれにも
幸せ
なんていう
幻は
降ってこない

川は
流れながら思い
川の流れを
あのころと同じように
流れている。

夏だ!!!
梅雨も明けたよ!!!



自由詩 夏だ! Copyright 草野大悟 2012-07-15 21:09:30
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