夜めぐる夜  Ⅴ
木立 悟




石の家の背
ひらく空


あたたかさ
翳りのあたたかさを
指は着て


ひとつの泡が
いつまでも消えずに
流れる言葉の空を映していた


光をなぞり
歩いていた
花のような歴史が
道の両側に
咲いては散り
笑んでは笑んだ


遠い光
聞こえぬ光
水彩の腕
地を混ぜて


影は影を押し
ひとつふたつ鳴き
曇に到いては
雨の音となり


花を持つものが花をこぼし
見えないところで咲いてゆく
折れて倒れて
刺さる道の音


地と海と空
二本の指
はざまにふるえ
満ちてゆく白


青空と金属
鉱は水の下
霧は歩むものたちの
足もと以外を消してゆく


樹のかたちをした
樹ではない生きものが
樹とともに風にそよいでいる
山へ街へ庭へ そよいでいる


ざわめきは朱く
ふちどりは多重に
ふるえはふるえに
暗がりを暗がりに書きしるす


ひらくことのない窓が灯り
石の路を聴いている
壊れた楽器から離れぬもの
野の境に立ちつづけている
































自由詩 夜めぐる夜  Ⅴ Copyright 木立 悟 2012-07-14 21:46:37
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