驟雨
takano

車窓からみえる風景を俯瞰し、埋葬の地層にもぐっていくと、忽然と体が浮遊し
天地左右をうしなった感覚に襲われ 胎児の視線で耳をすます

 揺れている、天竺へむかう幾数の途が閉ざされている、それは黒い霧、闇を排しながら飛ぶ大魔王                

 低空飛行をしいられた土壌監査機は 蹄鉄の反発力を試験し蓄蔵してなお地表の表面張力とのパワーバランスをたくみに舵とり 身体的新陳代謝の噴射力を最大出力まで高めて 水平に投擲された楕円のアルミニウムを形成する、人魂の守護神を司りつつ
             
  苦役列車は、人影がみえかくれする息をひそめた密林をはしっている、眉間にしわ寄せ白粉をふりまいて、昨日の轍をなぞっていく             
科学文明の寵児とはやされたその形態は 瞳孔を不眠と集中の万華鏡にいざない 世界層の凹凸した表層を跳躍してデジタルな映像化を甘受している


 連結の差異音とともに視線は他者のスマートフォンに瞳孔をとじる


 スローモートされた老爺の溜息が 連写した網膜の襞に分解され整然と序列をつくりはじめると、その動向を定めるように
紫斑を刻印する

 如実とはいかなる表層を射して 看守されるのだ

その心象をまことしなやかに覆い その鋳型と同体化しすっぽりかさなりあう表出とはなにか


 陰を伴侶とし添い遂げようとまといつく情念の掃射と祈祷

             霊気と地質的鉱物のアマルガム

 埋めよ  埋めよ    生めよ

しっとりした手触りでこの間隙を 陥没を補填るのだ

 
 地層にもぐりこんだものたちは 生涯を溶路の流動にゆだねられおしながされ 遊興とは無縁のダーツな旅をしいられる


  雲雀がうたう

 オゾン層をやぶり 透過する無心の放射をたくみにかわしながら

そこではざらついた気泡をふくんだ驟雨がやまない


自由詩 驟雨 Copyright takano 2012-07-11 07:53:10
notebook Home 戻る  過去 未来