南国にも雪はふるのだろうかと
君が言う

南国では溶けて雨になるわと
私は答える

南国で雪がふれば、みんな喜ぶのにと
君が言う

みんなって誰のことと
私は問う

南国にも病気の人がいるだろうと
君が答える

そろそろ休んだほうがいいわと
私は言う

君の熱を帯びたおでこに
私のおでこをのせる
そこに埋まっている磁石が
引き寄せ合って
ぴたりと　くっつく
命という体温をやりとりする
あたかも
海を飛び越えて
無数のかなしみの素粒子が
ふたつの陸地の間を行き交うように

ああ　ひんやりしている　とても　と
君が言う

私はいつだって雪になる
君という南国にふる雪になる
すぐに溶けて雨になり
水になるさだめの
南国にふる雪になる
そして形あるものは蒸発していく

もう寝たの
私はささやく