石川浩司 さま
ともちゃん9さい

石川さんとわたし


耳の長い女子高生だった
長い信号待ちをしていた
黄色い旗をふったら黄色い電車やってきて
風街をふきとばしはじめたので
涼やかなおはじきお口に入れて後輩に電話した
あかずの踏切りかもしれなかった
どっちでもよかった

高2の美術の時間はまだ受験じゃないから
ピーターバラカン似の先生がおでこをぴくぴくさせながら
好きな絵を描いていいと言った

たまの「犬の約束」が出たばかりで
最高傑作だとおもっていた
特に「ガウディさん」から「あくびの途中で」の流れが
次の頁の必然としかいいようのない秀逸さで
でっかいCDラジカセで聴くたびにていねいに鳥肌をたてていた
だからそれで絵を描くことにした
「ガウディさん」の絵を描くことにした

でもひどい雨が突然落ちてきて

後輩と電話で話した内容は
「ムーンライダーズって解散したんですよねー」って
1992年に言い放ったため、正しい情報の提供である

だから君はどっかにいるんだけど
わたしの前にまだ君はいないから
海に出かける約束をしていないから
犬がくわえてっちゃうことはない

みんなカラフルな傘をさした

タッチはそのころはまっていた佐々木マキ氏の影響うけまくりだったが
はじめて先生がほめてくれた
色づかいをほめてくれた
デッサンも油絵もだめだったわたしをはじめてほめてくれた
後輩の同級生は吹奏楽部の顧問とできているらしい
わたしは美術準備室に入れなかった
どっちでもよかった
みんなカラフルな傘をさした

描いた絵は中学の恩師にあげた
どっちでもよかった
「耳の長い男信号待ちしている
 黄色い旗をふったら黄色い戦車やってきて
 町を壊しはじめたので
 ドイツのコインを入れて彼女に電話した
 
 でもひどい雨が突然落ちてきて
 みんなカラフルな傘をさしたので
 海にでかける約束は
 犬がくわえていっちゃった」

今もときどき音がドンシャリ流れていねいに鳥肌たてる


ともちゃん9さい より


2012年7月3日(火)
石川浩司生誕祭 〜ゴーインに51歳!〜
吉祥寺Manda-La2
お客さん参加型「バースデイプレゼントコンテスト」にて朗読したもの


自由詩 石川浩司 さま Copyright ともちゃん9さい 2012-07-08 13:03:33
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