仰瞻
桂川精螺

やっとの思いで手繰り寄せた夢の先は
端のほうが誰かに齧られて、見当たらなくなっていた

空の青は
つつがなく高く聳えているというのに
少女は手のひらに顔を隠して
仰瞻さえままならない

僕はといえば、少女に掛ける言葉を探り当てようと
先の折れた針金をまるで愛おしいもののように握り締めながら
白痴のように立ち尽くしている

稲積たちが音もなく融けて、土くれになるまでのわずかな時間と
水に落ちた薔薇の花弁が重力に逆らい、ゆるやかに花蕊へ結ぶまでの時間とを
飽きもせず繰り返しているというのに
あたり一面には芽吹きだした柱が
柱が、

青黒い柱が遠い星の方角を指しているというのに

(針金の先はかすかに震えるばかり)

すなわち僕とは少女と同値だ


自由詩 仰瞻 Copyright 桂川精螺 2012-07-08 12:32:37
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