時の流れ
服部 剛

この部屋の窓からは 
雨の降り始めたもやの向こうに 
遥かな山々の緑があり 
眼下に一面の畑は広がり 
歩道には、レインコートを着た犬と 
飼い主が歩調を揃えて、歩いていった 

   * 

昼頃の散歩で、偶然 
前の職場の老人ホームの
ボランティアのおばちゃんと
久しぶりに会った 

携帯電話の小さい画面で 
はいはいする〇歳の周を見せたら
(可愛いねぇ・・・)と
おばちゃんの頬がほころんだ 

   * 

今よりもっと不器用な青年だった僕を 
いつも見守ってくれていた 
おばちゃんのまなざしを胸に暖め 
雨の降りそそぐ窓の外を、眺めている 

30分前に歩いていた 
レインコートを着た犬と 
飼い主がゆっくりと 
帰りの道を、歩いていった 








自由詩 時の流れ Copyright 服部 剛 2012-07-06 23:32:38
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