世界との齟齬を埋めるために
うめバア

しばしば自分はひとりだと思うのだと
古い、古い、友人に話してみた

今、感じている、この世界との不調和は
ときにどうにも、こうにもと

しかし彼女は、私が就活でメゲているときには日本におらず
30代を過ぎても時給900円のバイトでしのいでいたことも知らず
非正規雇用が3人に1人にふくれあがっていることも聞いていない

子育てで忙しいから新聞もネットも見ないと
遠回しに、核心を避けつつも
私が弱音を吐くのをじっと聞いていたいようであった
そのくせ、私をどうにか封じ込めようと
共感とは逆の方向に、言葉を運ぶようにも思われた

感情的になるのは、ネットの見過ぎだと
何につけ過剰反応だよと

蚊に刺されたから切るねといって
やたらと、ありがとうを連発して
会話を終えた

ひどく疲れて、竹下通りを歩いて駅まで戻る
これから2時間も電車を乗り継いで帰宅するのだ

彼女は言った
私なんてずっと、違和感の中で生きているよと
外国でヘンな日本人と言われ、下手な英語で15年も過ごし
帰国したら浦島太郎、日本人に見えるよう、頑張った
でも、もうどちらにも、居場所はないんだよと

世界との齟齬を埋めるために
彼女もまた、そうやって歩いていた

でも、彼国で支配階級の言語を身につけて
多少は優越感あるでしょうと
違和感もそれは高級なものだよねと
それでもまだ、意地悪なこと、言いたくなった

だまっていたけど


私はまあ、ひねくれ者だ





自由詩 世界との齟齬を埋めるために Copyright うめバア 2012-06-28 01:10:06
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