二本木劇場
salco

 ストーンド

(2007年 某月某日)
「ハロゥ」
「おう、元気か」
「何とかな。お前は?」
「変わりないよ」
「今どこ」
「家。お前は?」
「パリス」
「そう」
「実はな、さっきアイジェントから連絡が来た。日本のリカーコムパネィがアイコンを使いたいとさ」
「ふーん」
「お前どう思う?」
「うーん…。どうも思わんな。ベビーフードの方がおもしれえけど」
「そう? じゃ、ロィヤリタィの配分だが、」
「好きにしろよ。それよりけっこう曲書いたぜ?」
「朗報だね。でもエゥロップトゥァーが控えてるし、10月にはソロアルバムをリリース」
「オーライ。じゃあなミック」
「じゃあなキース」

参考資料 http://sankei.jp.msn.com/economy/news/120327/biz12032716540026-n1.htm




 苦手

「違うよ、おばあちゃん」
「だからヒーハだろ?」
「FIFAだよ。フィ、ファ」
「だからヒーハつってんじゃないの」
「あのね、フィ」
「ふい」
「ファ」
「ふわ」
「フィファ」
「ヒハ」
「違うってば」
バン!(ふすまが開け放たれた音)
「うるせえなさっきから黙って聞いてりゃフイイだのフワアだの。なふやけた言葉が言えるかい、こちとらヒち代続いた江戸っ子でぇ」
「おじいちゃん…」
「おう、ありさ。よく来てくれた。母ちゃんどーした、母ちゃんは」
「あー、仕事。次の日曜に来るって」
「あのよ、ありさ。江戸っ子はなぁ、いやニッポン人はなぁ、ヒーハで上等なんだ」
「びっくりするじゃないか藪から棒に。嫌だねぇ、こんな時ばっかし出て来て」
「おめえこそ何だ、盆にも来やがらねえで」
「だってさ。みんなが揃うの旧盆なんだもの。ねえ?」
「なこと言い訳になるか馬鹿野郎。東京もんはなぁ、ヒち月にやるもんだ」
「あら、さいですか。旧暦が本式だって町内会のテントで毎年毎年まっ昼間っから飲んだくれてたのは、どこのどなたさんでしたかねぇ」
「ありゃ付き合いってもんでぇ」
「盆踊りなんざ田舎出の奉公人が始めたもんだなんてさんざ小馬鹿にしといて、付き合いにいそいそ出向く大馬鹿もないもんだ」
「てめえこそ亭主の墓参りもしねえでどこほっつき歩いてんだ毎月毎月よ」
「十三回忌も済んどいて何言ってんだい、こうしょっちゅう帰って来られちゃわざわざ行く用もないじゃないか」
「また屁理屈並べやがら。おめえ達がさっぱり来ねえからこっちから足運んでやってんだ」
「嫌だねぇこのシとは。昔っからそうなんだからガタガタガタガタシがみっぽくて。だからねぇ、ポスターガイドの家だってご近所で評判になっちまって
 テレビ局まで来るんじゃないか!」
「なにポスタア外套だぁ?」
「おばあちゃん、poltergeist」
「えぇ?」
「ポル、ター。あ、hi,daddy」
“Hi,Alissa.”
「おかえりロバートさん」
「ハイ、オカサン、タダァイマ。Uh,キョウハ、dog dayデシタネイ! …ドシマシタカ」
「いえね、お父さんがまた」
「オトサン! デマシタナカ!」
「そうなんだよ。ほら、仏間の唐紙すっ飛んでんだろ?」
「オトサン! Pleased to meet you.ワタシノナマエハ、Robertデス」
「消えっちまったよ」
“He’s gone.”
“Oh.”
「情けないねぇ全く。成仏しないは外人さんに弱いは」
「オトサンハ、ワタシヲ、uh,キライデス」
「ノー、ノー、ノー。気がちっちゃいの! 大口ばっかし叩いてさ、ろくでもありゃしない」
“He’s eh,a narrow minded偏狭な jerkバカ,so rowdy騒々しい all the way.” 
“No.…Was he?”
“I don’t know.”
「さ、ロバートさんお風呂入っといで。バスバス。えーと、じきライスだからね」




 コリント人への手紙

(略)
「あの子はどうして、こんなに金遣いが荒くなってしまったのだろう。どこでどう
育て方を間違えたのか」。
 そんな事を考えて、お母さんは昨夜ちっとも眠れませんでした。お父さんもほと
ほと呆れたのか、今朝は出がけに「申太郎はまだ懲りんとやろか」と、もはや怒る
気力も失せたようでした。
 あなたはまだ若いし、都会には色々と誘惑が多いことはお母さんもわかっていま
す。でも去年の夏、女子高生に貢いだあげく美人局のような目に遭って、相手の男
に刺されて三週間入院したのを忘れたわけではないよね? 病室に来た刑事さんに
も諭されて、これからは本分に帰って勉強に身を入れると約束もしてくれた。
(略)
 お金は先月末に振込んだばかりです。先祖伝来の土地に手を付けるわけには行き
ません。あなたがいつ迄もそんな調子なら、家は戌二郎に継がせます。万が一にも
わんちゃんが嫌がったら、午二郎叔父さんの所に頼むしかないと、お父さんは考え
ています。
 一度じっくり話し合いましょう。来週にでもお父さんとそちらに行こうと思いま
す。

 少しですが、お米と野菜を送ります(山菜はあく抜きをしてあるから、そのまま
料理に使って下さい)。では、くれぐれも体に気をつけてお過ごし下さい。

しんちゃんへ                           
                                  母より


散文(批評随筆小説等) 二本木劇場 Copyright salco 2012-06-27 23:29:28
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