夢幻
永乃ゆち



千切れかけた夜に流れる月が未練する

  (月をハート型にくり抜いた夜貴方と)

君の面影が遠い空の飛行機雲に乗って

  (寄り添う私は無言の約束)

初恋は通り雨のように虹を残して消えた


掌の中の幸せが空より広く僕を満たすけれど

かき集めた幸せに塗る色がないと嘆く

  (私の親指が伝えた愛を貴方の小指が知る術もない)


掬われて救われた骨は君の鎖骨に違いない

花弁を纏う天女は風に恋をしたんだ

どうかそっと花開いて


憎しみは人から生まれ人へ還るとか

   (小さな私は砂漠に落ちた涙)

君だけが教えてくれたことを反芻しながら

   (貴方は気にも留めずに夜を進む)

体ごと夜に預けて月明かりに心を浸す

   (どうか私に会いに来て)


僕たちは永遠の呪縛

硝子の迷路の住人

すれ違い行き違い

一生触れ合うこともなく

想いだけを募らせて終わる


私たちは来世の契り

今生の夢に涙を浮かべて

さようならさようなら

一生抱き合うこともなく

唇を噛み締めて終わる


夜と朝が永久に続くように

君を(貴方を)永遠に愛してる










自由詩 夢幻 Copyright 永乃ゆち 2012-06-26 21:41:30
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