クハ モハ クモハ サハ
nonya


電車の
先頭車両の
運転席の
後ろに陣取って
景色の中に
割り込むように
のびていくレールを
眺めるのが好きだった

クハ モハ クモハ サハ

駅に
着くたびに
一息入れるように
プシュウと圧縮空気の
音がしてドアが開いては
閉まったものだけれど
今はリニアモーターだから
少し味気ないかもしれない

クハ モハ クモハ サハ

幾つも
何度でも
健やかなる時も病める時も
タタットトッと電車は
ポイントを乗り越えて

飽きず
躊躇わず
雨にも風にも負けず
レールは枝分かれして
レールは束ねられて

クハ モハ クモハ サハ

電車が走り続ける限り
レールはのび続けて
レールがのび続ける限り
僕の旅は終わらなくて
僕の旅が終わらない限り
電車は走り続けて

クハ モハ クモハ サハ

呪文を唱えれば
いつでも
額の裏側の暗闇に
一条のレールが浮かび上がる




自由詩 クハ モハ クモハ サハ Copyright nonya 2012-06-23 19:49:47
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