[寝顔]
東雲 李葉

君の寝顔を見ていたら自分の子供を思い出したんだ。
まだ誰も知らない暗がりの奥の奥の底の底。
生まれる日を知らない卵のぶ厚い殻の内の内から。
私を呼ぶ声が聞こえたの。私はあなたにあなたに選ばれたの。

嘘つきだって平気だよ。
真っ赤な舌を出していたって怒らないよ。
見通しがきかなくたって
ちょっと先が闇だって
暗い暗い洞窟を抜け出して。
目を見て。鼻を擦って。口を合わせて。

私きっとあなたを選んだ。まだ素肌になりきれないけど。
産んでみたいと思えるほどにあなたは幼くてか弱くて。
なのに包むように肩を抱いて眠るから。
君の寝顔を見ていたら自分の子供を思い出したんだ。

誰も知らない暗がりの奥の奥の底の底から
生まれる日を知らない卵のぶ厚い殻の内の内から
私を呼ぶ声が聞こえたの。
私はあなたにあなたは私に選ばれたの。


自由詩 [寝顔] Copyright 東雲 李葉 2012-06-19 13:39:42
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