雨音
takano

眼を瞑ると何が見える

瞼越しにLED照明の残像が

やや遅れて

大脳葉で知覚される

残像はしばらく漂い、すぼんで消えたあとは

赤黒い闇のスクリーンに

何かを見ようとしても

心のなかで 念じる何かの

イメージはけしてやってこない

ときに レンズについた

ミジンコのような微生物が

横切っていく

ミジンコを追いかけて

見ているとそのうしろに

何やら人影が見え始める

それは予期しない

既知との遭遇だったりもする

(のだが ・・・・・・  )



 睡魔が襲う

(幻野が降りてくる)

土蔵の塗り壁がみえる

酸化してくぐもった象牙色の

歪な勾玉の芽が生えている

洞穴は暗く 獣の匂いで窒息する

 (肉体は朦朧につかれ)

 たちゆかない追憶の呪縛から解かれると

梅雨のしなだれた雨音が

換気口の向こうから

聞こえてくる





自由詩 雨音 Copyright takano 2012-06-17 19:02:09
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