場違いな賓客
まーつん

この世は居心地が悪い

芝居小屋に立ちつくす
招かれざる大根役者のように
俺は どう振舞えばいいのかわからない

君はまるで薔薇だな
庭の生け垣に生い茂り
いつでも水や肥料に恵まれて
血の様に赤く 咲き誇っている

男と女ってのは なんで惹かれあうんだろう?
それが 面倒くさく思える時もある

身軽に一人で 泳いでいきたい
この 塩素の利いたプールのように
肌を荒らす悪意と欲望で 波打つ世界を

ネオンに染まった水面に 黒い人影が顔を出す
逆光に沈んだシルエットから 鋭いまなざしが射かけてきて この裸の胸を 串刺しにした

そうさしずめ 君との出会いは こんな感じだった
夜のプールで向き合う 二つの裸の心

君のことを 忘れるべきなんだろうな
まだ 顔もわからないうちに
まだ 名前も知らないうちに

断っておくが 俺には まともな将来なんてない
病に蝕まれた身体と 卑屈に歪んだ心
生まれてきたのが 間違いだったんだ

それとも 君の手を取って泳ぎ出し どこかの緑なす孤島を目指すか?
蜜が流れ 鳥が歌い 一年中 甘い果実をたわわに実らす 木々の生い茂る楽園を?

それは夢さ

手の上に震える
一本の羽根のように
吹けば飛ぶような 儚い夢

君には家族がある
俺の行く手にあるのは
自分で掘り当てた たくさんの落とし穴だけだ

それを避けて歩くうちに
貴重な人生の持ち時間は 俺の傍らを
早回しの映写フィルムのように過ぎていき 終幕へとたどり着いているだろう

そう 気付きもしないうちに

俺はそのうち
このパーティを抜け出して
煙草でもふかして 一息つくことにするよ

もう 身体を気遣うこともいらない

あの世でね


自由詩 場違いな賓客 Copyright まーつん 2012-06-15 00:08:12
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