擦れ違うひとに
はるこ


今日もまた、ふらっと本屋に行った
漫画の棚の一角で あのひとに似たひとを見つけた
思わず凝視した
あのひとではなかった

三月に同じ職場から 違う職場へ異動になった
同郷ということがあって 他市だけれど同じ市
携帯番号を交換したわけでもなく
またきっとすぐ会うことになりますよ って言われたけれど
きっと もしかしたら二度と会うことはないかも知れないなって
そう思って握手をして別れた

あれから三ヶ月 案の定会えていない

なんのことはない ただの後輩
それ以上でも以下でもなくて
気になったことはあったけど わたしの相手ではないことは自覚している
二度と会えなかったとしても
気のいい後輩だった と
いい思い出として残ると思う
その考えは今でも微塵も変わってない


でも

違うひとだと分かっていて
今日はもう一度見たくなった
思わず探してしまった
違うひとだと分かっても
気のいい仲間の姿を探してしまった

元気でいると いいなと思う。


わたしの好きな作品に
島本理生さんの「ナラタージュ」がある
その中に
「ものすごく似ていたから、別人だと分かっていたけど見ていた」
とあって


それに少し触れた気がした
六月の蒸し暑い夕方


散文(批評随筆小説等) 擦れ違うひとに Copyright はるこ 2012-06-13 21:03:38
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