姉妹
藤代

耳だった氷
が溶けて
もう、聞こえない
これからは
ハムが耳の代わりだなんて
勘弁して欲しい
髪を伸ばして
適当に返事をするから


「あんたはブタだ」
って、お姉ちゃんが言っていたけど
わたしは言わないよ
お母さん
言わないから
冷蔵庫、閉めよう

閉めるね


本の声は
まだ聞こえる
なんとなく開いた
右側の
四行目と五行目の間
叫んでいた
あなたは主人公ですか?
一ページ目
すぐ、行くからね


お母さん
お姉ちゃんならそのうち帰ってくるよ
冷凍室を貸してくれる所なんて
そんなに無いんだから
だからお母さん、閉めよう
お魚が可哀想だよ


ただ生きる
それだけでも私は
掃除機の音がうるさい、ことを
古い型、だからだとしか思えなかったから
聞こえてくる
聞こえてくる野菜を吸い込む音魚を吸い込む音肉を私を包帯を
どこかへどこへも連れていかない



パタン

溶けたら
また戻っておいで
また一緒にお腹痛くなってさ
頭キーンとなればいいよ
わたしは、何も言わないから

言わないから

溶けて

頬を伝っていく


ブヒ


自由詩 姉妹 Copyright 藤代 2012-06-13 18:23:59
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