旅立つ夜毎のうた
シホ.N


ありがとう
僕をむしばんだ
虫たち

ありがとう
僕を愛してくれた
虫たち

僕は旅立つ
君らは僕の
供をするというのだろうか
それともむしろ君らが
僕をいざなうのか

僕は語らぬ
語ることが
君らの姿をいつわる
サッと消えてはぼうぼうとして
不在の中にも不気味に存在する
あるいは存在の中に不在をはらんだ
小憎たらしい
君らの姿

ありがとう
もう僕をいたわるな
もうここへやってくるな
こんどは僕が君らをいたわってやる
僕が翻弄してやる
それでいいか
いいってことにしておくよ
僕をむしばんだ
虫たち

そこで君らは
ニヤリとする
顔という身体部分をもって
表情という表現を借りるなら
きっと君らは
ニヤリとしている


自由詩 旅立つ夜毎のうた Copyright シホ.N 2012-06-08 01:47:05
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