気高い科学
竜門勇気


とある日の夕方から
世界が止まって見えるようになった
窓辺に腰掛けて
動く視界を想像する毎日

花虻はせわしない直線
見えてないふりをしてると
無遠慮な振動に丸まりながら
耳たぶをかすめて点になり 粒になり 消える

バーベナの花びらが粒の側で落ちる
布の籠の底で水たまりが揺れる
君は僕の想像が造れない場所にいて
何をしてるかわからない
けど
花虻やバーベナを動かす力で
きっと笑ってればいい
笑ってれば
そう仮定するだけで楽しい

白いコンクリートの道を
青い猫が走り去る
口を花びらで飾って
想像の坂道を駆け登る

僕は君の想像が創造できない場所にいて
もう
新しい妄想すら許されない窓辺に立つ
頭の中にあるだけの世界を
冷たい科学で動かし続けている

天才科学者マリーちゃんを知ってるか
彼女が見るように僕も見ている
気高い科学の世界


自由詩 気高い科学 Copyright 竜門勇気 2012-06-03 21:05:47
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