地に沁みる影が光を含むまで
beebee
この世の中には
幕間に控えて居る役者は
いっぱいいて
人が羨む役を貰えるかは
まことに運次第なのだと思う
人は与えられた役の
勘所を知らず
何時の間にか人の注目も外れ
失意のうちに
役を降りようとするが
一度与えられた役は外れることはない
静かに舞台の裾に影を映して
立ち竦んでいる
評論家や伝記作家が
それを写し取り
また新しい光を当てるが
大半は役柄を演じ終わると
やはり静かに
舞台の裾へと消えて行くことになる
まことに人の一生は
その人以外の物ではなく
目を瞑るその一瞬の
泡沫の涙のようなものなのだ
目尻を流れ
頬を伝い
唇をかすめるその想いの
なんとあえかな光を
地に沁みる影が含み取る
その時まで