世紀末の記録
takano

それは

世紀末のとある

アジアの国でのこと

とある家族が崩壊した

父であった少年は

母であった少女を

車の後部座席に横たえ

深夜の国道を走っていた

少年は夜明け前までに

故郷に少女を送り届けるため

アクセルを踏み続けた

横たわっていた少女は

なにやら呪文のような

鎖状の言葉を吐き続けた

少年に言葉を返す暇を

与えないかのように

吐き続けた

少年は耳を塞ぐことも叶わず
ぐるぐると吃音めいた言葉の鎖に
がんじがらめに縛られていった

急カーブを減速することもできず
深夜の闇の中を疾走した

すべては赤子のために

何も知らず すやすやと

家で眠る我が子のために



自由詩 世紀末の記録 Copyright takano 2012-05-26 19:26:00
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