Whale Dreaming
南 さやか

長い長い悪夢から醒めると
そこは海だった

君とふたり
きっと同時に流れ着き 第二の生を得たのだろう

僕は憶えていた
あの日 君の腕を掴んだ後に
何があったのか… を…
 君と交わした最後の言葉を

手足を失い 多くの過去を忘れ
それでも生きて行ける 水の生を得た今なら
…あの日の傷を癒せるだろうか


神の祝福に 呼応の声を上げる
彼らに愛されていると せめて今だけは信じよう

住処を奪われた仲間達が
一斉に応えてくれる この世界では
一人じゃないね 君も
僕も

両手のかわりに平らな体を 隙間なく寄せ合いながら
どこまで泳いで行けるだろうか



水面から顔を上げ 目的の丘を確かめる

あまりに急ぎすぎた二人の過去を もう一度
埋葬しに行こうか…



自由詩 Whale Dreaming Copyright 南 さやか 2012-05-26 03:59:23
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