涙の粒
藤鈴呼

何かに 似てると 思って
そっと 足踏みを する

それは
寒いからでは なく
凍えそうな 空気が
愛おしいからでも ない

言うなれば
あなたの編んだ 帽子の柄を
少しだけ 
思い出したからで

岩石広場に 落ち葉が 沢山 落ちていて
落ち葉 と言う 名前なのだから
葉が 落ちているのが
至極 当然で 有るのに

何かを
拾い集めなければ ならないような
錯覚に 陥る

落としてしまったような 悲しみばかり
心に 秘めた ままで

涙の粒だけは
落とさぬように

ゆっくりと 踏みしめる
落ち葉

しゃくっ しゃくっ と
小気味良い 音なんて
響かないのだけれど

変わりに 啼くのは
季節はずれの 蛙

声だけで 仰々しく 感じるなんて
余程でしょう

あの 影には
りんどうが 
隠れているのです

天然記念物ですから
落ち葉探し どころか
足を 踏み入れることも
普段は 出来ないの ですけれど

今日ばかりは 特別に と 
見せて くれました

ちょっと 色あせた 花びらが
こんにちは
冬は もう そこですねって
笑って いました

★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・°


自由詩 涙の粒 Copyright 藤鈴呼 2012-05-18 22:46:23
notebook Home 戻る  過去 未来