蕺草(未詩・独白)
プル式

ここにあるのはただのがらくた
偽物で繋ぎ止めた
僕の透明な城
見える奴にしか見えない
はりぼての城

僕はそこでしか呼吸ができない
僕はそこでしか物が見えない
僕はそこでしか声を出せない
僕はそこでやっと笑う事ができる

ここなら飛行機雲に手が届く
何もかもが消える前に手が届く
例えば風に揺れる花の上で夢を見ることも
それを歌声にして動物たちと笑い合うことも
なりたい自分になることも

ある日不意に訪れたのは満たされた人
小鳥とさえずり動物たちと笑い合う
そうして僕に優しく微笑み手を伸べる
柔らかな声でそれぞれに歌い始める
高らかに高らかに歌い始める
そうして僕は城を出る

深く窪み落ちた真っ黒な目と
冬のすきま風の様に耳障りな声がうねっている
僕の城はもう壊れてしまった
風邪を引いた様に敏感になりすぎた皮膚が
僕の痛みを切り裂いて行く
もうじき何も感じなくなるだろう

ここにあるのはただのがらくた
僕を守った柔らかな嘘。


自由詩 蕺草(未詩・独白) Copyright プル式 2012-05-14 18:30:54
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