雨が降る
yamadahifumi

雨が降る
誰もいない海洋の上を
雨が降る
殺人者の泥濘んだ足元を
雨が降る
高地の笛吹きの笛の上を
雨が降る
思索する哲学者の頭蓋の上を
雨が降る
愛人と並んで店に入る男の毛皮の上を
雨が降る
深夜のカーレースのボンネットの上を
雨が降る
見知らぬ誰かをネットで叩いている女の住む屋根の上を
雨が降る
幼子に応えるように微笑む中年男の禿頭の上を
雨が降る
三百五十年忘れられてきた白骨の上を
雨が降る
変色したいつかの平和記念碑の上を
雨が降る
今まさに殺そうとする男のナイフの上を
雨が降る
今まさにキスしようとする女のまぶたの上を
雨が降る
雨が降る・・・

雨が降る
全てを微笑って見ている
神の上にも


自由詩 雨が降る Copyright yamadahifumi 2012-05-10 10:19:40
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