アンテ

外に出たら
死んでしまうんだって
だれかが言う
ほんとうだろうか
立派に育てるのは
栄養とか水をたっぷりもらえるからだって
だれかが言う
ぼくたち自身の
力じゃないんだって

白い空
白い太陽
雨を降らせる機械
病気にならない薬

くすすく くす
笑い声
どうだっていいよね
おなかいっぱいになって
ぐっすり眠って
あったかくて

ずるずる ずる
根を引きずって歩く
白い空が近づく
ここにいれば
死ぬまでなに不自由ないのにって
だれかが言う
わからない
ハサミで切り取られて死ぬのが
幸せなんだろうか
ずるずる ずる
白い空にたどり着く
触れると弾力があって
体当たりしても
はね返されてしまう
顔を近づけると
向こう側が
透けて

見慣れない物
動く物
地面の草が
踏みつけられて

立派に育って
おいしい野菜になりましょう
そう教えられて
今まで生きてきた
だから
外に出ちゃいけないんだって
だれかが

だれ?

ずるずる ずる

行ってきた場所は
だれも訊かない
もといた場所に落ち着く
水を飲む
空が白い
太陽が白い

目を閉じる



自由詩Copyright アンテ 2003-10-22 23:50:11
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