椿の湯
月乃助

里にくだると
花の咲く共同湯がある



音をなす早瀬の
そのほとりで 今は、椿がさきほこり
三ぶ咲きの桜たちが 
うらやましそうに 見おろしている



昼間から入りにくるのは 老婦たちばかりで
ときに 間違えたように若い娘がいたりする
子を生まぬ形のよい乳房に 私は知らずに嫉妬の眼をむける



婆さまたちが、村にできた
コンビニの話をしていた
( ・・・・昔は、生そばがあそこで食べられたのに )



肌がしっとりと湯をすいはじめ
ほてったそれが汗をおとすころ
降り始めた小雨を
小さな針のように 背に受けた



湯殿の先の椿の花にみとれていると
( xxx山の麓のむすめさんけえ・・・ ) と
声がかかった




二年ぶりの春が、
私のところにやってきた








自由詩 椿の湯 Copyright 月乃助 2012-04-30 21:50:41
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