松島・石巻小品集ーおくのほそ道をゆくー
服部 剛
松島の丸い湯ぶねに身を浮かべ
きらりと笑う枯葉舟かな
さやさやと幹に映る光と影は
旅する我の心鏡となり
歓びを天いっぱいに広げてる
白、白、白の木蓮の花
蟻々の働いている石段を
登ってゆけばあかるい神社
門前にでんと坐った石蛙
日をそそがれて目玉は潤み
御仏は瞳を閉じて、目をあわせ
叢に立ちよろこんでいる
松島の海にはばたく鴎達
自由を詩いあぁあぁと鳴く
ゆらゆらと身をゆらしてるほそ柳
又三郎が、あらわれそうだ
電飾の豆らんぷ等と思ったが
真昼の椿の葉群であった
つくし等は寒そうに震えているけれど
茎はまっすぐ天を指さす
しゃかりきに眼下を横切るありんこに
「がんばれよ」と言い、我は歩まん
旅先の日和の山を巡りつつ
桜のつぼみと夢を語らん
亡き人よ、地上に立った僕達は
肩を並べて第九を詩う
目に視えるすべてのものが、詩なのです。