夜明けのマドリガル
佐々木青

もしこの世界に音楽がなかったら
寄せては返す眠りのうちに
わたしの意識は夢を見るように
この世界に背を向けて
目にうつることのない
美しいものに想いを馳せていたことだろう

音楽が鳴る
帆前船が出港する
ファゴットが歌う
森の精霊とともに舞い踊る
シンバルが啼く
裂けた大地に風が宿る

わたしは目覚める

体温が上昇するわたしの身体に
這いあがってくる
爪先からやってくる
わたしのなかに入ってくる
冷たい
わたしの肌の内側に
金属のような感覚があふれてくる
(目覚めた朝!)
窓をつたって
光はそれらを叩いていく
リズムが生れる

シン、シン、シン、シシン、、、、、、

わたしの鼓動がもう一つ
生きていることとはべつのリズム

すべての朝は風を運ぶ
わたしを通りすぎていく
風はわたしを吹き鳴らす

もしわたしが音楽でなかったなら
この世界はずっと眠ったままだったろう
この世界に夜明けはやってこなかっただろう


自由詩 夜明けのマドリガル Copyright 佐々木青 2012-04-27 22:11:20
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