エイプリル
橘あまね

牽かれていく二すじの偏光
孤独な少年の手なぐさみ
自転車にまだ補助輪があったころ
ぼくは愛されていたかしら
いなかったかしら
初夏の予感が初めて来たとき

駅前通りに二匹の妖精が
物憂げに儀式する
知らない国どうし出会って
ちいさく音をたてるように
羽ばたきを響かせて

千年前からかわらない匂いがくる
狂おしく脈打って
過ぎた季節を追悼する
振り返るな、歩みを止めるな、
足跡を遺さずに
大気は爪弾かれていく


自由詩 エイプリル Copyright 橘あまね 2012-04-21 08:54:21
notebook Home